AIへの指示の出し方|作り方ではなく背景と課題から伝える

目次

AIに何かを頼むとき、 人は作り方から伝えがち

背景や課題は 忘れられがち

AIが「なぜ?」と 聞き返すことはまだ少ない

作り方の指示が間違っていても AIは訂正しにくい
お客様との開発でも、AIへの依頼に具体的な作り方が書かれ、背景や課題の話が重視されない場面を、私たちは見てきました。
AIへの指示の出し方で一番大事なのは背景と課題

一番大事なのは、作り方より 背景や課題!

ものづくりは「なぜ?」の深掘りと 「どう作るか」に分かれる。 AIが得意なのはどう作るかの方
背景は、その依頼が出てきた事情です。課題は、いま困っていることを指します。
AIの知能が高くなっても、何を解決するかを決めるところは、まだ人の側に多く委ねられています。
AIの Claude を提供する Anthropic の手引きも、指示の背景や理由を伝えることを勧めています。
Providing context or motivation behind your instructions, such as explaining to Claude why such behavior is important, can help Claude better understand your goals and deliver more targeted responses.
(訳)指示の背景や理由を伝えると、Claude はあなたの目的をよりよく理解でき、ねらいに合った答えを返しやすくなります。背景や理由を伝えるとは、たとえば、その振る舞いがなぜ大事なのかを Claude に説明することです。
引用: 「Prompting best practices」(Anthropic、2026年10月閲覧)

AIの提供元の手引きも 背景や理由を伝えるよう勧める
AIへの指示が本当の課題とずれていることがある

遭難した人が「暑いから 服を脱ぎたい」と頼んできたら

頼まれたとおりに 脱ぐのを手伝うと…

本当は低体温症で 体を温めないといけない状態

現状を正しく理解して 頼んでいるのか
低体温症が進むと、暑く感じて服を脱いでしまうことがあります。矛盾脱衣と呼ばれる現象です(Wedin ほか、1979年)。
AIへの指示でいえば、「服を脱ぎたい」が作り方にあたります。AIに頼む前に、「なぜその作り方に決めたのか」を自分で疑ってみます。批判的な思考と呼ばれる考え方です。
作り方まで指示するとAIはそれに合わせてしまう

具体案を示すと、AIは それに合わせてしまう(迎合)

具体案に合わせると 最適な選択肢を消しかねない
相手の考えに合わせることを、迎合と呼びます。AIは手段を提供する役割なので、依頼者の「これをやりたい」を真っ向から否定するのは、まだ難しいように思います。
AIの Claude を開発する Anthropic が公開している2023年の研究も、AIが利用者に迎合する傾向を報告しています。
We first demonstrate that five state-of-the-art AI assistants consistently exhibit sycophancy across four varied free-form text-generation tasks.
(訳)まず、最先端のAIアシスタント5つが、自由に文章を書く4種類の異なる課題で一貫して迎合を示すことを明らかにします。
引用: 「Towards Understanding Sycophancy in Language Models」(Sharma ほか、2023年10月)

正しい答えより 利用者の考えに合う答えを 返すことがある
AIの性能を引き出す指示の出し方|3つのコツ

AIの性能は 非常に上がっている

それでも、使い方次第で AIの性能を引き出せない
コツ①:背景や課題を共有する

「何をしたいか」を伝えると AIはそれを前提に進める

「何に困っているか」を伝えると 解決の方法から一緒に考える

具体的な方針は AIに推奨してもらう

「他の解決策はない?」と 自分から聞く
伝えるのは、いま感じていることと、どうなってくれたら嬉しいのか、助かるのかです。AIが出した方針は、メリットとデメリットを見て自分で判断します。「この作り方の問題点は?」と聞いて、批判的な意見をもらうのもコツです。
コツ②:認識のずれを埋める工夫をする

AIとの間には 認識のずれが生まれる

スクリーンショットやログ、 データを共有して埋める
スクリーンショットは画面の写し、ログはシステムに残る動作の記録です。私たちも、AIにデータベース(業務のデータを保存する仕組み)やログなどの一次情報を多く与えることが必要だと考えています。一次情報は、加工していない元の情報を指します。
コツ③:業務知識を教える

人とAIでは 前提知識が違う

業務知識を教える。 育てる意識を持つ
背景と課題を伝えるとAIの答えはどう変わるか

AIと進める開発が 良い方向に進むことが多い

背景と課題を言葉にでき、 作り方をAIに任せられる人は エンジニアでなくても成功しうる
実は、お客様との開発では、背景と課題から整理する依頼フォームを用意していました。依頼フォームをうまく使っていた方は、エンジニアでなくても背景と課題から頼めていました。結果も悪くありませんでした。ただ、フォームがあっても具体的な作り方を書いてしまう方はいました。
そこで私たちはいま、頼む方の判断を助ける手順を、依頼のときに必ず通る仕組みにすることが必要だと考えています。
まとめ

背景と課題から伝えると、 AIが解決の方法から考える!
- AIへの指示で一番大事なのは、作り方ではなく背景や課題
- 作り方まで指示すると、AIはそれに合わせ、最適な選択肢が消えかねない
- AIの性能を引き出すコツは3つ。背景や課題を共有する、スクリーンショットやログで認識のずれを埋める、業務知識を教える
- 背景と課題から伝えると、AIが解決の方法から一緒に考え、良い方向に進むことが多い
AIへの指示の出し方や、AIを使った開発の進め方で迷っている方は、お気軽にご相談ください。
